サモラさんはブーディカに腹を立てないようにしているが、苦戦している。 「大好きではあるんです」 「ブーディカと一緒に遊ぶのは楽しいです。ニックがいないときに一緒にいてくれるのは嬉しいのですが、猫だったらと思います」 「ここまで私の時間、関心、エネルギーを求められなかったら良いのに…。かまってあげられないことに、罪悪感がなければ良いのにと思います」 「ブーディカにもニックにも腹を立てないようにしていますが、イライラしてしまうんです」 サモラさんが会社で働いている間に、ニックさんがブーディカと家にいて、一日に何度も散歩やドッグランに連れて行った。 しかし今、ニックさんは州外で働いており、8月から家に帰っていない。 そのせいでブーディカは問題行動を起こすようになった。家の中でおしっこをするのだ。 これまで犬を飼ったことがないサモラさんにとって、困難な状況だ。 「罪悪感があるんです。ブーディカには、ブーディカのことを必要としている人と一緒にいてほしい」 「十分にかまってもらって、愛されていると感じてほしい。ブーディカのことは大好きなんですが…」 サモラさんはそう語ったが、その声は次第に小さくなっていた。

「この子は大好き。だけど…」

ニューヨーク州在住のアレックスさん(仮名)は、2020年10月に犬のグレート・デーンを迎えたが、その選択を後悔している。 同種の他の犬よりも忠誠心がなく、落ち着きがなく乱暴だと、アレックスさんは話す。 アレックスさんがさまざまなしつけ方法を試したものの、どれもうまくいかなかった。 「この子が大好きなので、とても複雑な心境です」 「大好きだし、私もかわいがっています。この子も私が好きで、楽しく過ごしてくれていると思います」 「ペットを飼ったのを後悔しているなんて思うのは恥ずかしいですが、これが本音です」 カナダ・オンタリオ州在住のジェシカ・アヴェリーさんは、カナダがロックダウンに入る3日前に、ジャーマン・シェパードのフランキーを迎えた。 2022年夏、アヴェリーさんは職場のチームマネージャーとしてフルタイム出勤になった。働いている間はフランキーを週に2回、犬のデイケアに預けている。 「出費を考えると、フランキーを預けるのに、私がいろいろと我慢しなければなりませんでした」 フランキーをデイケアに預けない日は、 アヴェリーさんは朝5時30分に起きて散歩に連れて行き、仕事が終わってからもフランキーと遊ぶ。 「ジャーマン・シェパードは大型犬で運動が必要です。10分くらいオモチャを投げてあげればいいのとは違います」 運動が足りないと、フランキーは何でも噛んでしまう。 「最初の6カ月で、仕事用の靴はみんな噛まれました」とアヴェリーさんは言う。

パンデミックでペットを飼い始めた人は増加

新型コロナによるロックダウン中、退屈と孤独を紛らわせるのにペットを迎えた人が多かった。 2021年にアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)が行った調査によると、アメリカの家庭の5世帯に1世帯が、パンデミックの間にネコかイヌを飼い始めたという。 多くはまだ飼い主と一緒だが、出社勤務に戻ったことで、ペットの問題行動に頭を悩ます人や、ペットと離れる時間が増えて複雑な気持ちを抱えている。中には、後悔の念で苦悩する人もいる。 同協会の回答者のほとんどは、パンデミック中に受け入れたペットを里子に出していないと答えた。 だが、英ガーディアン紙によると、ニューヨーク動物愛護センターでは、2021年と比べてペットの放棄が25%増加したという。 さらに、飼い主にはもうひとつ悩みの種がある。 フォーブス・アドバイザーが2022年8月に行った調査では、物価高騰により動物病院の費用を払うのが難しくなっていると、約3分の2の飼い主が答えた。 米国国立医学図書館の調査によると、ペット関連の後悔は認識されず、ペットを飼っていない人には理解されない。 そのため、飼い主は不安になったり、気分が落ち込んだりすることが多い。

出社命令に物価高…苦悩する飼い主

カリフォルニア州に住むジェニファー・スケリーさんは、ロックダウンに入るカカ月前に、ゴールデンドゥードルのジャック・ルビーを迎えた。 スケリーさんは1年くらい前に出社勤務に戻り、月・水・金はジャックを犬のデイケアに預けている。 2歳になるジャックは、 スケリーさんが家を長時間不在にすると、機嫌を損ねて態度で示すという。 「コーヒーテーブルの上にあるものを落として、噛むんです」 「それかバスルームのゴミ箱に入ります。『ひとりで家に置いていくなんてひどい』と訴えているようです」 「週45ドル(約5950円)です。明らかにすでに払っている毎月の出費に上乗せで、本当に慣れなくて…」とスケリーさんは話す。 それに加え、 ジャックは6カ月前のハイキングで滝から落ちて怪我をした。 動物病院に4日間入院し、ペット保険ではすべての費用を賄えず、スケリーさんは2000ドル(約26万4500円)ほど自己負担した。 その他にも予期せぬ出費はたくさんある。たとえば、ペット用の歯磨き粉は小さいものでも15ドル(約1980円)する。 火曜と木曜にジャックをひとりで家に置いておくと、たいていは問題行動を起こすとスケリーさんは話す。 これらの日には、ジャック・ルビーを外に出すために、スケリーさんは30分の昼休み中に車で家に帰る。 「往復のガソリン代もかかるし、時間に追われます。明らかに大変です」

飼い主の不在に慣れないペットたち。パンデミック前後で行動が大きく変化

ニュージャージー州在住のダフナ・ルーチンスさんは、大学生だった2020年7月、ウサギのアプリコットを迎えた。 ロックダウン中に友だちが欲しかったからだ。 ロックダウンの終わりが近づくにつれ、 ルーチンスさんはアプリコットの行動に悩まされ始めた。 仕事から帰ってくると、家の中で放し飼いになっているアプリコットが、ベッド周りのストリングライトを噛んでいたのだ。いつもはやらないことだった。 ルーチンスさんはペット用のカメラを買って、アプリコットを観察して話しかけられるようにした。今は不在の時は、婚約者にアプリコットを預けている。 「(私の声には)間違いなく反応します。カメラ越しに声が聞こえると、耳がピンと立ちます」 2021年3月以降、モースさんの事業は急伸した。2021年3月には15名だったスタッフは、10月には55名に増えた。 モースさんによると、パンデミック前と比べて、犬や猫の行動がかなり違うという。 犬の中には恥ずかしがり屋で、知らない人がいると落ち着かない子もいる。飼い主がいないと散歩に行くのを怖がる犬もいる。 飼い主もまた、ペットのことで過敏になりすぎていると、モースさんは話す。 「予約の間隔が短くなったり、ペットの仲間が増えるように日中の予約が増えたり、(代行者に)ペットと長く一緒にいてもらえるよう、予約時間が長くなったりしています」 まだ在宅勤務を続けている飼い主もいるため、ペットは構ってもらうことに依存している。 飼い主がいなくなると、機嫌が変わって愛想が悪くなったりするペットもいると、モースさんは話す。

「一緒にいるのに慣れ過ぎて、そばにいないと不安になる」

ペットと離れることに不安を感じる人もいる。フィラデルフィアに住むジェス・クリブダさんも、その一人だ。 クリブダさんが週に数日、出社勤務に戻ったところ、パンデミック期間に飼い始めたレノアと離れることに不安を感じたという。 そのため、クリブダさんは転職し、同じ職種でフルタイムの在宅勤務ができるようにした。 クリブダさんにとって、レノアが心の支えになっているという。 「レノアを迎えたのは最高の決断でした」 「パンデミック期間中、一緒に住んでいたパートナーと別れたので、ひとり暮らしを始めました。レノアがずっと一緒にいてくれたので、本当に助かりました」 「レノアとは、取ってこいをして遊びます。私が不安に押しつぶされそうになったときの対処方法になっていて、(レノアと一緒にいると)落ち着くんです」

この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan

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